罰則条項 ※R18です。(長くてすみません) 抱き締めている腕から半分以上乗り出した裸体を、透明な雫がつややかに伝い落ちていた。 「…や、…。」 吐き出すように拒絶の言葉が繰り返される理由を考えるという行為。それを成歩堂は自分でも意識しないうちに放棄していた。 身体の中心から溢れ出る欲望と、眼前で艶やかに喘ぐ裸体とがそうさせているんだと思い込む。 力の入りきらない手が。震えながら成歩堂の手を掴む。 それは屹立している若い男根にゆるりと触れていた掌。膝立ちした成歩堂は、片腕で響也の身体を支えつつ、 急くでもなく、ゆっくりとあやすような仕草で 握りこんだ。 切なげな表情に誘われるように、強弱をつけて少しずつ刺激を与えてやると、 響也の口唇からは確かな快楽の吐息が落ちる。 …ぁ…っん 閉じられたままの瞼が震える。しがみついた手が成歩堂の服をずっと離さないでいる事がなんだか酷く嬉しくて、 額や頬にそっと接吻けを落とした。 その度に微かに漏れ出る声は成歩堂の中にある 炎を確実に煽っていく。 ミリオンボーカリストの声は切なく、甘く成歩堂を浸食した。 「…成、歩堂さ…ん…」 途切れ途切れに呼ばれる名が行為を促しているように思えた。それでも誘惑とは言いがたい強張った声の不自然さに、 成歩堂は気づけない。 「響也…くん」 無意識に名を呼びこめかみに接吻けると、それまでゆるゆるとあやしていただけの手に強く力をこめて男根を握り締めた。 「ぁあ…っ…!」 背骨が軋む音がしたのではないかと思う程に裸体が跳ねる。 握り締めた手で激しくしごきあげながら、噛みつくように荒々しく接吻を交わす。重力に逆らい切れずに床に倒れ込み、成歩堂は縋り付いて くる青年を己が下に組み敷いた。 股間に伸びて来ていた手を捕らえ、押さえつけると、改めてその顔を覗き込む。 「やだ…。もう……や」 強ばった声、怯えたような表情。 滲んだ水色の瞳だけは欲情に溺れているように見えるのに 、その声は誘っているものとは程遠い。 それでも全てをさらけ出したまま蠢く肢体は淫猥で、すべてを押し流していってしまうらしい。 なにかが…どこかが変だという認識が脳裏をよぎる。けれども、思考は其処で留まってしまうのだ。 見下ろす視線に、苦しげな吐息と共に、大粒の涙がわき上がって つう と流れ落ちていくのが見えた。 「焦らすなって、事かい?」 言い終えると根元までくわえ込んだ。生暖かい口腔に含まれて、ひくんと腰がはね上がる。 「あぅん………っ!!」 ぴちゃりと濡れた音がたつ度に、無意識に声が漏れ、それは成歩堂をもより強い 衝動へと駆り立てていく。 担ぎ上げた脚にゆるりと手を這わせ、柔らかなそれでいて張りのある引き締まった感触を楽しむ。 中心近くから、膝裏の方へそしてまた中心の方へと何度も繰り返せば己自身を愛撫する成歩堂の髪にからみついた指が震えながら彷徨う。荒い呼吸に混じる切ない声は、まるで助けを求めているようにも、成歩堂には聞こえた。 その一瞬。ほんの僅かな時間ではあったが、ふっと理性が蘇る。 七年前のあの裁判。自分の提出した証拠品だと、確定した瞬間。歓喜でもなく、嫌悪でもなく、途方にくれたような表情をした響也が浮ぶ。 違う。そう何かが間違っている。 しかし、チカチカと点滅し出す思考は、更に高く鳴いた声に消えた。 「成歩…っぁ…も、」 艶めく声に誘われるものを絶頂へと導く合間に、己の指を溢れた唾液で湿し、成歩堂はその手を 尻の奥へと差し伸べた。 引き締まった、だが、柔らかな双丘を割り、後に自分の欲望を突き刺す場所へと指を這わせる。 髪をまさぐっていた指先が一層強く己の髪を握りしめたのを合図にして、成歩堂は熱を帯びた蕾の中に濡れた指を潜り込ませた。 解きほぐすように内部で指を蠢かせると、やわやわと締め付けてくる。何度か馴らしたせいか、更に増やした指もあっさりと受け入れた。 指を奥まで含ませていっきに掻き回し強く吸い上げると、悲鳴に似た声と同時に、成歩堂の口内で熱い肉の先端から液体が迸った。 躊躇いもせず受け止め、ごくりと音をたてて、喉の流し込んむ。 粘ついた液体だったが、響也のものだと思えば然したる抵抗もなかった。 それも不思議な気がして、べろりと舌を出し口腔に残る粘ついたものを指の腹に乗せて見る。自分の唾液と混ざり合ったそれは、見ているだけでもゾクリとする何かがあった。 こんな事をしておいてなんだけど…まるで変態だよね。 成歩堂はひとり語ちて、口端を上げた。そして、離れがたい肢体から手を退けて立ち上がる。 潤滑剤を取り出そうと少しばかり離れたのだけれど、床で寝転んだまま温い吐息を漏らしていた響也と目が合うと、それは不安そうに揺れていた。今にも涙が零れそうで、堪らない気持ちになる。 「離れるの寂しいかい?」 「…なっ!? ちが…「これを取りに行っただけだよ。」」 そう、答え成歩堂はパーカーを床に脱ぎ落として、もう一度に響也に覆い被さった。 狭くて、ゴチャゴチャした部屋。外の喧噪は聞こえない。 訪れたのは昼すぎだったろうか、窓の外はゆっくりと日が傾きかけていた。 窓から差し込んでくる光りが成歩堂に暗い影を落として、その両手でもって取り囲まれている響也は檻に閉じこめられているような錯覚を受けた。 「じゃあ、入れるよ」 するりと、指が成歩堂の腕が上げられる。 「や、なる…!」 拒絶の言葉を吐こうとすれば、かみつくような接吻けで声を塞がれた。片足を担ぎ上げられ、視線が落ちる。霰もない場所を見つめられているのだと思えば、それだけで泣きたくなった。 そうして、再び指が侵入してくる。くちゅりと音がして、簡単に成歩堂の指を受け入れてしまう自分の身体が情けない。 「三回目だからかな、随分馴れたようだね。」 頬を紅潮させて、成歩堂が笑う。 途端に淫らな収縮をした自分の内部は、差し込まれた指をはっきりと響也に伝えてきた。それだけで、 成歩堂によって達して萎えたばかりの部分が、ぴくんと反応するのがわかった。 まるで、淫乱な女みたいじゃないか。 情けなくて、両眼を隠すようにして掌で顔を覆った。指先の濡れた感触に涙を流していた事がわかり尚更に羞恥が増す。どんな顔を成歩堂の前に晒していたのだろう。 吐き出した欲望の分だけ冷静になった思考は、しかしねっとりと舐めあげられた感覚で雲散した。 「っぁ……!!」 腰が揺れて、担ぎあげられた足が宙を掻いた。 けれども、ぬるりと生暖かい舌の動きは止まらない。内にかき立てられた欲望を煽って、御しきれない快感のうねりに、響也はしゃくりあげるように息をつむぐ。 差し入れられた指が冷たい液体を伴っていた事もあり、熱い舌の感覚はいっそうリアルに感じられた。 たしかな快楽と言う名の欲望は、響也の胸に苦痛にも似た痛みを伴う。 身体ではない、心を刺す痛み。 「やだ…や…。」 逃れる為に口にした拒絶の言葉のせいか、くちゅりと濡れた音を立てて、口唇と指が離れて行く。 胸を撫で下ろしたくなるような安堵感と同時に喪失感が沸き上がる。 しかし、ひやりとした空気にさらされた場所には熱いかたまりが押し当てられた。 「ぁ………成歩…っ」 声が震えたのが自分でもわかる。 「力、抜い…て」 低く呟く声とともに、響也の中に押し入って来るもの。 ずくりと身体中に嫌な音が響き強烈な快感と痛みとを同時にもたらす。 「…ぃあ!…ぁっ…や」 悲鳴を上げて身を捩れば、成歩堂の動きが止まった。 けれども挿入されたものを抜くわけでもなく、放置される。体内に感じる男はドクリドクリと動き、求めるように肉襞がそれを絞り上げた。 そんな状態に置かれて、辛くないはずがない。響也は固く目を閉じたまま手を伸ばしすがる先を求めた。空を切るかと思われた指先がたくましい肩にあたり、がむしゃらにしがみつく。無意識だったが、足は男の腰にからみついていた。 僅かに、腕の中の成歩堂の身体が強ばった気がした。 「響也く、ん…」 「…や、どうし、て…こんなの、やだ…。」 動けば、接合部分からじゅくりと濡れた音がした。羞恥と快楽に全身が震るえる。 「何が、だい?」 成歩堂の熱い吐息が耳元に届けば、身体は焦れたように身悶えた。 クスリと声がする。きっと、薄く笑みを口元に浮かべた、あのいつもの表情をしてるに違いなく、こうして良いように扱われている自分自身が酷く惨めに思えた。 同性なのに相手の欲望を受け入れる側にされ、あまつさえそれを享受している。 「…離、して…」 「わかってないね。しがみついてるのは、君の方だ。」 男の台詞にパッと意識が鮮明になる。逃れようと身を返すよりも早く、成歩堂は埋めた欲望を、ゆっくりと 抜き差しし始めた。 「ぁあ…や…っぁ!」 喘ぎと悲鳴の入り混じった声が、突き上げる動きに合わせて唇から絞り出される。涙混じりの甘い声が成歩堂の欲望を直撃し、彼が抱き初めている疑念と不安をその甘さでとろけさせている事にも気付かずに。 わかってりいるのは、自分の体内で男の欲望がさらに猛々しく、熱を孕んでいくこと。 性急さをましてくる抜き差しに 荒く乱れた二人分の吐息が、部屋の空気を震わせる。 淫らに喘ぐ声。 溢れた蜜で濡れそぼる結合部がたてる、淫猥な音。 それら全てに意識は焼かれていた。 いつの間か抱き起こされ、互いに座り込んだまま抱き合うようなかたちで、更に突き上げは激しく、強く なっていった。 がくがくと揺さぶられ、自らもその動きに併せて腰を蠢めく。 己の下半身を支配する男の熱に逆らう事など不可能だ。 「あ…っ、…だめ…ぇ!」 細い嬌声をあげる口唇を、接吻けで塞がれる。 「いい、顔だ…。」 響也の状態を完全に把握しきっているかのように、成歩堂は腰の動きを早める。体重と重量とで最奥まで突き刺さった男の欲望は、数度の突き上げとともに さらに熱く、硬くそそりたつ。 結合部は、秘所から溢れ出す粘液と、己から漏れたまま股間を伝い落ちる液でぐちゅり、と粘った音を立て続ける。 「ゃ……っ」 「まだ、言うんだね、こんな、堪らない顔してるのに。」 「ちが…ぁっ!」 言葉を紡ごうとして、わざと遮るように突き上げてきた熱に、唾液で濡れそぼった口許から 悲鳴が上がる。 大きく見開いた瞳に、熱い吐息を吐きだし、成歩堂はぐっと歯を食いしばったのが見えた。きつく眉を寄せた表情。 「…………響、や。」 自分の腰の上に乗ったままの響也の腰をぐっと 持ち上げ、引き下ろす勢いとともに半ば抜かれた男根を一気に突き上げられる。頂点にまで登り詰めるかのように、最奥を穿った。 「…………っ!!!!」 身体がビクンとのけ反り、欲望が押し出されるように勢い良く出る。 それは、成歩堂と己の肌を白く汚していった。そうして全身が硬直し緊張した場所が、中にくわえ込んだ成歩道自身を限界まで締め付けていた。 己の中に何かが注ぎ込まれる感覚は、響也にとっては初めてだったが朦朧とした意識でも、嫌悪の気持は浮かばなかった。 ただ、脱力感のみが支配する身体に力を込める事など出来ずに、自分を嬲った男の胸元に縋りつくように頭を落とす。迫り上がる切なさに、嗚咽が漏れる。 思考がグジャグジャだ。嬉しくて、悲しくて、気持ちよくて、辛くて。 「…や、…」 訳のわからない、こんな思いはもうたくさんだ。そう告げようとした掠れた声が、接吻けに奪われる。 互いの舌が幾度も絡み合っては離れ、その度にため息のような吐息が漏れ出た。 「…はぁっ…ぁ…」 焦点のぼやけた視界に成歩堂の瞳の色が映り込んで、そこには淫らに喘ぐ自分の姿がある。 ああ、そうかもしれない。彼の瞳に自分が写るのならば、本当は何もかもどうでもよかったのだ。 「なる…も、っと…っ」 こうして、腕でもって掴んでいても、成歩堂の心の所在すら推し量る事も出来なくて、何もかも恐かった。その、恐怖が。灼熱の快感の狭間ですら響也の胸をきつく締め上げる。 引き込む様にすがりついて、深く爪をたてる。肌を摺り合わせて汗を共有しながら、全身で男を求めながらもやすらぎと呼べない場所を、心はただ彷徨った。 〜14に続きます
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